きのみちブログ

三立木材マスコットキャラクターのイラスト

「そばにいる」だけの利他

 

ペットに学ぶ利他のこころ
うちのワンコを題材に利他についてまとめてみたので紹介させていただきます!

 


こまち 2歳 メス

 

静かに寄り添う存在、ペット
-犬が教えてくれた“ただ寄り添う力-

ある友人が、仕事のストレスで心が折れそうになっていた時期がありました。
その夜、ソファでうつむいていると、飼っていた柴犬が静かに横に来て、
ただそっと体を寄せて座ったそうです。
慰めるような行動をするわけでもなく、吠えるでもなく、
ただ“そばにいる”。
その瞬間、友人は安心して涙があふれたと言います。

犬はなぜ、こんなにも人の心に寄り添えるのか。
ここには、実は行動学的にも非常に興味深い理由があります。

犬は不思議な生き物です。言葉も持たず、立派な知識や技術があるわけでもないのに
人の心の深いところにまっすぐ触れてきます。

つらいときは静かに寄り添い
嬉しいときは全身で喜び
落ち込んでいるときはそっと顔を覗き込む。

利他の心というと、大きな奉仕や自己犠牲を思い浮かべる人が多いかもしれません。
でも犬が教えてくれるのは、利他とは、特別な行動ではなく
“そばにいるという選択” そのものだということではないでしょうか。

 

 

‐「あなたのことが大切だから、一緒にいるよ」  という姿勢‐

① “共感能力”の原型を持つ動物
犬は、人の表情・声のトーン・姿勢の変化に非常に敏感です。
研究でも、犬は人間の眉の動きや声の抑揚から
「喜び」「悲しみ」「怒り」を識別できることがわかっています。
つまり犬は、言語ではなく 非言語的な“情動の揺れ”に同調する 能力を持っています。
これが、落ち込んだ飼い主のそばに静かに座るという行動につながります。
犬は人の顔の“右側”をよく見ます。
右側には本音の感情が表れやすいため、
犬は人が取り繕う前の「心の色」を察知できるのです。
落ち込んだ主人に寄り添うのは、本能でもあり、共感の初期形態でもあります。

② “オキシトシンの双方向作用”
犬と人が見つめ合ったり、触れ合ったりすると、
双方の体内で オキシトシン(愛情ホルモン) が分泌されることが知られています。
これは人と犬の関係が、親と子の絆に非常に近い構造 を持つことを意味します。
つまり犬は、人を安心させようとして寄り添っているだけでなく、
寄り添うことで自分自身も安心を得ている。
利他的な行動は、犬にとっても“自然な幸せの行動”なのです。

③ “仲間志向”という進化の結果
犬はオオカミを祖先に持つ動物ですが、長い歴史の中で
「人間と協働する」ために社会性を発達させた動物です。
仲間を気にかけ、群れの調和を保ち、役割を補い合う。
これらは犬の本能であり、相手のために動く=生存戦略の一部 とも言えます。
利他性は、犬にとって“人に従うための行動”ではなく、
仲間の一部として自然に発揮される能力なのです。

 

「犬の利他の本質から、私たちが学ぶべきこと」
犬の利他は、決して劇的な行動ではありません。
何か大きな犠牲を払うわけでもありません。
しかし、人間が見失いがちな “大切な生き方” を示しています。

犬の行動をひもとくと、私たちが学べることは大きく 4つ に整理できます。

① 「相手の感情を“読む”ことが、最大の思いやりになる」
犬は人の表情・声・しぐさなど、
言語化されない情報を驚くほど正確に読み取ります。
そして、その感情を“直す”のではなく、まず受け止めることを選ぶ。
私たちは、誰かが落ち込んでいるとつい
「励ます」「正す」「改善する」方向に行きがちです。
しかし犬は、“理解しようとする姿勢そのものが救う”ことを教えてくれます。
人も本来は、理解されるだけで立ち直る力を持っています。

② 「言葉より“存在”が、人を支えることがある」
犬の寄り添いは、言葉より強い力を持ちます
ひざにそっと置いた前脚
静かに寄り添う体温
何も言わない沈黙

これらは、「あなたは一人じゃない」というメッセージそのもの。
私たちも、誰かを支えるときに言葉を探しすぎなくていいのだと思います。
ただ、相手のそばに立ち続けるだけで、人は驚くほど救われます。

③ 「利他は、才能でも性格でもなく“選択”である」
犬の利他行動は、特別な能力ではなく、
仲間を気にかけるというごく自然な習性から生まれています。
誰かの変化に気づくこと
少しだけ手を止めること
何も言わずに寄り添うこと
これらの行動は“誰にでも、今すぐ、どこでも” できます。
犬が教えてくれるのは、利他とは大きな行動の問題ではなく、
日々の小さな選択の積み重ね だということ。

④ 「利他は、巡り巡って自分自身を癒す」
人と犬が触れ合うとオキシトシンが増えるように、
“利他的な行動は、行った本人の心も癒す”ことが分かっています。
誰かを想い、誰かのために動くとき、人間にも同じホルモンが分泌され、
ストレスが軽減され、自己肯定感が高まる。
利他は、相手のためであると同時に、自分を温かくする行為でもある。
犬はそれを毎日のように、自然にやってのけます。

 

犬が持っている特徴の中でも、利他的な心と重ねやすいポイント

見返りを求めず寄り添う→ 人の“在り方”としての利他に直結しやすい。
相手の気持ちをよく読む・察して動く→ 思いやり、傾聴、共感とつながる。
リーダーではなく仲間として支え合う→ 献身、支援、協働の象徴になる。
ただ存在しているだけで安心を与える→ 利他は「行動」だけでなく「姿勢」であることを示す。

人はしばしば、「利他とは、何か大きな行いをすること」だと考えがちです。
しかし、犬たちはもっと静かに、もっと自然に、それを教えてくれています。
彼らの利他は、見返りを求めず、成果を測らず、
「その瞬間、目の前の相手を大切にする」という、とてもシンプルな姿です。

そこに、利他的行動の本質があります。
利他とは、誰かを幸せにしようとする大げさな行為ではなく、
「相手を孤独にしない」という、静かな姿勢なのです。
犬はそのことを、言葉ではなく、生き方で示してくれます。
そしてこの利他性は、私たちに深い問いを投げかけます。

 

■ 私たちは、犬がくれた利他をどう生かしていくのか?
最後に、こんな言葉があります。
“犬はあなたの人生の一部だが、あなたは犬のすべてである。”
だから犬は、惜しみなく私たちに与えてくれたのです。
時間も、注意も、愛情も——すべてを。
その生き方は、私たち人間が忘れかけている利他的精神そのものです。

利他とは、声を荒げずとも、壮大でなくとも、
静かに相手を大切にするという“生き方”なのだ。